大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 平成6年(ワ)29号 判決

主文

一  原告の被告らに対する京都地方裁判所昭和五四年(ワ)第五九二号貸金請求事件の判決主文第一項に基づく金銭債務は存在しないことを確認する。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実及び理由

第一  原告の請求

主文同旨

第二  事案の概要

一  争いのない事実

1  原告は、主文第一項掲記の判決(以下「本件確定判決」という。)により、訴外西川政一(以下「政一」という。)に対し、金二七五〇万円及び内金一〇〇〇万円に対する昭和五〇年五月一日から内金一七五〇万円に対する昭和五一年五月一日から各完済まで年三割の割合による金員を支払うべき債務を負担していた(以下「本件債権」という。)。

2  前項の判決は、昭和五五年四月三日ころ確定した。

3  平成五年九月三〇日、政一は死亡し、被告らが政一を相続し、他に相続人はいない。

4  政一は、本件確定判決の訴え提起に先立ち、本件債権の内金一〇〇〇万円について、昭和五一年一一月二二日京都地方裁判所昭和五一年ヨ第九〇一号不動産仮差押決定を得て(以下「本件仮差押命令」という。)、同月二五日原告所有の別紙物件目録記載(一)ないし(五)の不動産に対して仮差押の登記を得た。そのうち同目録記載(三)ないし(五)の不動産については現在も右仮差押登記が存続している(以下「本件仮差押登記」という。)。

二  争点

本件債権についての消滅時効の成否

1  原告は、本件債権は次のとおり時効により消滅していると主張している。

(一) 本件債権は、本件確定判決により確定された債権となり、昭和五五年四月三日ころから新たに消滅時効が進行することになり、それから一〇年が経過した平成二年四月四日時効により消滅した。

(二) 不動産差押による時効の中断は、不動産仮差押の執行手続が終了した時、すなわち、仮差押命令に基づき仮差押登記がなされ、右命令が債務者に告知された時に終了する。

したがって、本件仮差押登記がなされ、本件仮差押命令が債務者に告知されたと考えられる昭和五一年一一月二五日ころから、一〇年を経過した昭和六一年一一月二五日ころには本件仮差押命令の関係でも消滅時効が完成している。

2  被告らは、仮差押登記が存続する限り、仮差押による時効中断の効力は存続するから、本件債権のうち少なくとも本件仮差押命令の被保全債権である金一〇〇〇万円については消滅時効が完成していないと主張している。

第三  争点に対する判断

一  不動産仮差押による時効の中断は、不動産仮差押の執行手続が終了した時、すなわち、仮差押命令に基づき仮差押登記がなされ、右命令が債務者に告知された時に終了すると解するのが相当である。

本件においては、昭和五一年一一月二五日に本件仮差押登記がなされ、そのころ本件仮差押命令が債務者に告知されたと考えられ、それから消滅時効期間である一〇年を経過していることは明らかである。

二  また、本件債権は、本件確定判決により確定された債権となり、昭和五五年四月三日ころから新たに消滅時効が進行することになり、それから本訴が提起された平成六年一月一一日までに消滅時効期間である一〇年が経過していることは明らかである。

三  したがって、本件債権は時効により消滅したものというべきである。

そして、原告が本訴において右時効を援用していることは明らかである。

四  よって、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例